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The Rose

Posted by Jerrio on   6 comments   0 trackback

先日、NHKの音楽番組『SONGS』が「平井堅オールタイムリクエストベスト」ということだったので、久々に録画して見た。平井堅といえば、最近は様々なタイアップ曲をちょこっと耳にするくらいだけど、少し前にはアルバムも購入して結構聴いていたんだっけ、なんて思いながら。でも、その「少し前」が実は十数年前だったことにハタと気づき、愕然として思考停止。我に返って気を取り直し、数枚あった当時のアルバムを引っ張り出してみたんだけど・・・

確かにリクエスト上位の、当時のベタなヒット曲の入ったオリジナルアルバムもいいのだが、その中で最もよく聴いた大好きな一枚は、2003年に発売されたカバーアルバム『Ken’s Bar』だった。僕はおそらくこの一枚で、この人の音楽に対する真摯な姿勢やセンスの良さを実感し、共感したのだ。

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Ken's Bar / 平井堅

このアルバムは、最近やたらに流行っているカバーアルバムブームの先駆けと言えるかもしれない。ただ単なるカバーではなく、全く売れていない時代から自ら定期的に行っていたカバー曲中心のアコースティックライブを再現したような作りになっているのがミソだ(あくまでスタジオ録音ですが)。会場に向かう足音や2部構成の合間に入るドリンクタイムの喧騒などの効果音もさることながら、そのピアノやギターを中心としたライブな音作りは、親密で落ち着いた雰囲気を演出する。確かに静かにグラスを傾けたい気分になる。

このアルバムの贅沢さを書けばきりがない。キャロル・キングの「You’ve Got a Friend」をポール・ジャクソン・ジュニアのアコースティックギターに合わせてデュエットするのはレイラ・ハサウェイ。レイラの父、ダニー・ハサウェイはこの曲をロバータ・フラックとともに歌い大ヒットさせた。まだ世に出て間もないノラ・ジョーンズの「Don’t Know Why」は、作者であるジェシー・ハリス自身のアコースティックギター伴奏によるNY録音だし、平井堅が幼少期の思い出とともに大切にしてきた曲「大きな古時計」は、矢野顕子の自由闊達なピアノ伴奏にのせる、などなど、それぞれの曲でのワンポイントが、まあとんでもないのだ。おまけに最後に、その年の紅白歌合戦でも話題になった坂本九とのバーチャルデュエットによる「見上げてごらん夜の星を」を配する。そりゃあ売れないわけがない。

その中で僕にとって圧巻だったのは、当時若干20歳のジャズ系のシンガーソングライター、ピーター・シンコッティのピアノによるオープニングのインストゥルメンタル「even if」(これは平井堅の作で、前述の『SONGS』でのリクエストNO.1でした)に始まり、それにつながるピアニスト塩谷哲(しおのやさとる)のピアノ伴奏によるベット・ミドラーの「The Rose」、長年バックを務めてきた鈴木大のピアノ伴奏による桑田佳祐の「One Day」へと続く、ピアノサウンドが美しい冒頭3曲である。

特に「The Rose」をこのアルバムで最初に聴いた時は、思わずハッとさせられて、しっかり聞き入ってしまった。塩谷哲の澄み切ったピアノサウンドと抜群のアレンジ、それに絡んでくる平井堅の高音域の声の情感は、一気にそこから二十数年前の記憶を呼び起こさせてくれたのだ。今でこそこの曲は多くの日本人ミュージシャンにもカバーされ、2年前にはベット・ミドラーのオリジナル版がテレビドラマの主題曲にもなったりして、頻繁に耳にしている気がする。しかし当時そういう感覚を持ったのは、まだあまりカバーされていなかったことと、男性が歌うことの意外性、そしてその演奏からストレートに感じた救われるような清新さが、過去の記憶と呼応してよみがえったからだと思う。


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「The Rose」は1979年に公開された同名のアメリカ映画の主題歌である。一般的には、60年代を代表する夭折のロックシンガー、ジャニス・ジョプリンをモデルにした映画のように思われているかもしれないが、少しニュアンスが違う。元々は、ジャニス・ジョプリンの伝記映画を製作しようと企画されたのだが、最後まで遺族の許可が得られなかったという。そういう中で、当時すでにブロードウェイで歌唱力、演技力共に認められ大人気だったベット・ミドラーが主演に決定したことで、急遽彼女のイメージに合わせて60年代のロック・シンガーの総体として架空の歌手ローズを仕立て上げ、それに合わせてオリジナル・ストーリーに書き換えたらしい。

僕はこの映画を、大学の4年間に3回映画館で観た。最初に観たのは恐らく1980年の年末。入学した年だが、福岡・天神にある名画専門の「センターシネマ」で一人300円で観られたのだ。その年の春先に主題歌の「The Rose」が、ビルボードのヒットチャートを賑わしたことを知っていたので、そういうヒット作が一年遅れで安く観られたことを喜んだ記憶がある。3回とも同じ映画館だったが、飽きもせず上映のたびに足を運んだし、恒例の「2度観」をしたこともあったと思うので、延べにすれば4,5回は観たことになる。もちろんパンフレットも買った。

にもかかわらず、ストーリーの詳細部分をほとんど覚えてないのはどういうことだろう。もちろん自らの弱さや脆さを隠すために、酒や麻薬の力も借りながらステージに上がり観客を熱狂させる姿は印象的だったし、その激情ゆえに愛に溺れ、傷ついていく流れだったことは覚えているのだが、その話の内容に共感した記憶もあまりないし、そこに60年代のアメリカを見た、などという社会的な問題意識を持ったわけでもない。それでも何度も足を運んだ理由は、ただシンプルにそのステージシーンの素晴らしさと、そこに生き、そこに散ったローズの生を、何度も追いかけたかったからだろう。

ひとつだけはっきり覚えているのは、恐らく感動的に流れるのだろうと思っていた「The Rose」の主題曲が、最後の場面からエンドロールにかけて流れる際、シングル発売されたものよりもテンポが速くさらっとしていて、その映像からも決して感動的に終わろうとしたわけじゃないんだな、と思ったことだ。シンプルな曲にシンプルな歌詞。それはローズの寓意に満ちた人生を淡々と歌っているように聞こえたのだ。

  Link:  The Rose / Bette Midler

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The Rose: The Original Soundtrack Recording / Bette Midler


このロックンロールを主体とした映画にあって、ぽつんと咲いた一つの花のような主題歌「The Rose」は、当時アルバムも出していなかった無名のシンガーソングライター、アマンダ・マクブルームの楽曲である。この映画の音楽監督であるポール・ロスチャイルドはこの曲をプロデュース陣に主題歌として推薦したが、「退屈で讃美歌のよう。ロックンロールではない。」と却下された。それでもあきらめきれなかったロスチャイルドは直接ベット・ミドラーのところに持ち込み、結局彼女がこの曲を気に入ったため最終的に採用されたらしい。

いずれにしてもこの静かな主題歌は思いがけず大ヒットした。ビルボードのヒットチャートを3位まで駆け上がり、ベット・ミドラーはこの歌唱によりグラミー賞の最優秀女性ポップボーカル賞を受賞した。音楽監督の狙いが的中した、ということだろう。ちなみにポール・ロスチャイルドはジャニス・ジョプリンの「パール」など数々の名盤をプロデュースした人物であり、その背景からも、この曲にこだわったことは非常に感慨深い。

一方、「The Rose」の作者、アマンダ・マクブルームは、この楽曲によりゴールデングローブ賞の主題歌賞を受賞し世に出た。日本ではほとんど知られていないが、その後も地道に歌手、ソングライター、女優として活躍していると聞く。今年70歳になる彼女にとっても、この曲は転機となるものだったのだろう。既にスタンダード・ナンバーとも言えるこの曲を、今も大切に歌い続けているらしい。

  Link:  The Rose / Amanda McBroom

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Portraits / Amanda Mcbroom



<おまけ>

 映画「The Rose」の予告編です。海外版ですがぜひ。
  Link:  「The Rose」Trailer

 The Roseは、何といっても歌詞が素晴らしいです。日英対訳でぜひ。
  Link:  The Rose / Bette Midler(字幕:日本語/英語対訳)



 ★ アルバム写真は、Amazonサイトにリンクしています


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Comment

Nao says... "The Rose いい曲ですね。"
「The Rose」聞いたことがあるような?曲でしたが、
一番最後の、日本語訳を見ながら聴いてみたら、ほんとに歌詞が素晴らしくて、
感動してしまいました。
私の好きな絵本「葉っぱのフレディーいのちの旅」の内容に少し似ています。
シンプルなメロディーだけに、歌うのは難しいのでしょうね。

塩谷哲(知らないです。)のピアノで歌う平井堅バージョンも是非聴いてみたくなりました。
Ken's Barを買わないと、ですかね・・・。
紹介をありがとうございました。

2017.10.04 12:27 | URL | #pBuTiNiE [edit]
Jerrio says... "Re: The Rose いい曲ですね。"
この歌詞、いいですよね。シンプルだけど響いてくる曲想にも合ってますね。でもまあ、ロックじゃないねー。
Ken's Bar、ぜひ買ってください。「One Day」も、いいですよ。
そういえば、ノーベル文学賞の今日の発表、前にここで「Never Let Me Go」を紹介したKazuo Ishiguro で、少しうれしかったです。先月「日の名残り」を読み返したばっかりだったので、余計に。。。今から、Never Let Me Goでも 、聴こうと思います。
2017.10.05 22:39 | URL | #- [edit]
carmenc says... ""
Roseを見てレコードを探して買いました
ストーリーはコンサートとホテルの一室の繰り返しだったような…
たしか終わりに近付いてこの曲が流れる頃、公衆電話からママに電話するシーンで涙が溢れて止まらなかったです
2017.10.12 17:20 | URL | #- [edit]
Jerrio says... "Re: carmencさんへ"
コンサートシーンはたくさんありましたよね。そのほかのシーンは、実はあまりはっきりとした記憶が無いんです。

ただ、最初と最後がつながっていて、生前の部屋を関係者が訪れるシーンがあったように思うんだけど(両親もいたような。。。)そこにいた人々の表情に、悲しみがあまり映っていない気がして、流れる音楽もさらっと聞こえて。。。そんな記憶が残っています。
2017.10.12 22:15 | URL | #- [edit]
しおん says... ""
塩谷哲いいですよね!
2017.10.27 03:08 | URL | #- [edit]
Jerrio says... "Re: しおんさん"
いいですね。魂を感じます。
2017.10.27 08:57 | URL | #- [edit]

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