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マイ・ソング、ユア・ソング

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透明感溢れるまっすぐなサックス・サウンド。北欧を思わせるひんやりとした感覚。だけど何故か温かい。そんなヤン・ガルバレクの吹くソプラノサックスの登場を、爪弾くように始まるキース・ジャレットのピアノは、完璧なまでにお膳立てする。最初の数小節を聴きさえすれば、後に続く世界がスッと頭の中に浮かびあがってくる。キース・ジャレットの名曲、"My Song"だ。

  Link:  My Song / Keith Jarret & Jan Garbarek (Quartet)

梅雨の幕あい。晴れ間の見える休日の朝。昨日までとは打って変わって、さわやかな風が開け放った窓から入り込んでくる。キースのアルバム「マイ・ソング」を聴きたくなるのは、いつもこういうときだ。

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マイ・ソング / キース・ジャレット・クァルテット

初期のアーシーでゴスペルがかったアルバムや、同時期にアメリカン・カルテットと言われるメンバーたちと残した数々の難解なアルバムとは違い、「マイ・ソング」は当時のキースのアルバムとしては異例の親しみやすいアルバムだった。それは、サックスのヤン・ガルバレクを含むヨーロピアン・カルテットと呼ばれるメンバーの影響もあっただろうし、何よりもキース自身がドイツのECMレーベルで身につけ始めていたヨーロッパ流の「洗練」と「大衆性」の結果だったのではないか、と思う。

親しみやすい曲が入っているとは言っても、実のところこのアルバムは、フリージャズの要素も含んだバリエーション豊かなアルバムで、決して甘いばかりではない。しかし、ジャケットの二人の女の子の写真と、「MY SONG」という手書きのタイトルが、その内容とも相まって、とてもソフトで親密な印象を与えてくれているのは確かだろう。そしてその印象を決定的にするのが2曲目の"My Song"と、4曲目の"Country"だ。

  Link:  Country / Keith Jarrett & Jan Garbarek(Quartet)

キースは"My Song"をその後しばらくはライブのアンコールでも演奏していたようだが、新たに始めたスタンダーズ・トリオの人気とともに、自ずと自作曲であるこの曲からも遠ざかったようだ。もちろんアルバムでの再録など、ほとんど考えられない状態が長く続いていた。

"My Song"も他のたくさんの楽曲同様、記憶の片隅に押しやられつつあった中、2003年にギタリストのパット・メセニーがリリースしたバリトン・ギターでのソロ・アルバム「One Quiet Night」の中に"My Song"を見つけたときは、僕も歓喜した。キースのアルバム「マイ・ソング」から25年を経て久々に聴くその曲は、穏やかなギターソロに生まれ変わっていた。

  Link:  My Song / Pat Metheny

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One Quiet Night / Pat Metheny

パット・メセニーの演奏から3年後、キースジャレットは自身アメリカでは10年ぶりとなるソロ・コンサートを行い、2枚組みのアルバム、「カーネギー・ホール・コンサート」としてリリースした。その10年の間には、慢性疲労症候群で演奏活動を離れなければならなかった時期も含まれていて、キース自身にとっても感慨深いコンサートだったのだろう。ソロの即興演奏が終わった後に、なんと5曲のアンコールが収録されている。気難しい彼が5曲もアンコールで演奏すること自体驚きだが、その3曲目にピアノソロによる"My Song"の再演が含まれている。

  Link:  My Song / Keith Jarrett (Solo)

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Carnegie Hall Concert / Keith Jarrett

演奏が始まったときの歓声と演奏の終わった直後の歓喜の拍手は、30年近く前に発表したこの曲がファンの心を今もしっかりとつかんでいることを如実に表していた。僕も、このアルバムを入手した頃から、オリジナル盤も含め、この曲を再びよく聴くようになった。


続けざまに"My Song"を聴いた後、聴き散らかしたCDを片付けながら、ふと思ったこと。確かにキースにとってこの曲は"My Song"には違いないけど、一体どういう思いでこのタイトルをつけたんだろう。そんなことを思い巡らしていると、それと呼応するように”Your Song”というタイトルが頭に浮かんできた。ジャンルは全く違うけど、”Your Song”といえばエルトン・ジョンだ。と、今度は無性に"Your Song"が聴きたくなって、エルトン・ジョンの1970年のセカンド・アルバム「エルトン・ジョン」を手にとる。

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Elton John / Elton John

エルトン・ジョンは素晴らしい曲をたくさん書いているが、このアルバムの一曲目、"Your Song"は誰もが認める不滅の名曲だ。演奏も含め決して古さを感じさせない、僕の大好きな曲である。

  Link:  Your Song / Elton John

こうやって、ジャンルを飛び越えいろいろ音楽を聴きつないでいると、時々ちょっとした符合から、とんでもない妄想に駆られることがある。例えばこうだ。

キース・ジャレットとエルトン・ジョンは実は一歳違い。キースの方が一つ上だ。どちらもクラシックの世界で子供の頃から才能を開花し、キースは高校卒業後、ボストンのバークリー音楽大学へ、エルトン・ジョンは神童振りを発揮し、12歳から18歳までの6年間、英国の王立音楽院で学んでいる。

デビューはキースが1967年、エルトン・ジョンが1969年とキースの方が2年早いが、まだまだ駆け出しだったキースがヨーロッパでソロ活動を行うようになる70年代前半、エルトン・ジョンは既にポップ・スターとして全世界を席巻していた。ジャンルは違うとは言え、やはり英国出身のエルトン・ジョンの生み出す音楽に、キースはアメリカ本土には無い洗練を感じていた、としたらどうだろう。まあこれも、キースがエルトン・ジョンの音楽を聴いていれば、ということだが。あくまでも仮定の話だ。

泥臭いアメリカのジャズシーンの音楽をそのまま持ち込むのではなく、洗練された欧州で、多くの聴衆に喜ばれるジャズを探りたいと考えたかもしれない。そんな思いの中で目前にひかえたヨーロピアン・カルテットでのアルバム製作にあたり、欧州で受け入れられる大衆性を楽曲の中に持ち込みたいと考えた。ジョン・レノンやポール・マッカートニーではなく、クラシックを基礎にした自らの出自に近い同年代のエルトン・ジョンの音楽に学ぼうとしたとしても、決して不思議は無い。キースは以前から密かに好きだったエルトン・ジョンの出世作"Your Song"を意識して、2つの楽曲を作り上げ、その一つにはエルトン・ジョンへの対抗として"My Song"と名づけ、もう一曲にはよくわからないけど"Country"と名づけたのだ!!。。。なんてね。

まあ、何の根拠も無い妄想なわけだけど、"Your Song"を聴いた後に、"My Song"と"Country"を聴いていると、なんとなくその曲調や音楽の流れが、"Your Song"とかぶってきたりするから不思議だ。


徒然なるままに、愚にも付かないことを考えながら、束の間さわやかな風を体に感じていると、また明日から始まる喧騒の日々が不意に頭をよぎり、少し肩をすくめてみる。そんな穏やかな梅雨の切れ間の休日なのでした。



<おまけ>

“Your Song”の日本語がのっていましたので、こちらもついでに。

  Link:  Your・Song (訳詩付き) / エルトン・ジョン



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