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最近、少しばかり気分が下降気味。繁忙感が緩和されてくると、よく直面する傾向なんだけど、例に漏れずやっぱり来た。決して仕事人間でもないのに、もっと時間ほしいなー、なんて思っているうちが花ってことなのかな。

ハイどうぞ、と少しばかり時間が与えられると、今度はその時間を理想的に使えていないことにストレスを感じたりして...う~ん、まだまだ修行が足りませんね~。「僕には何もしない、何も考えない時間が必要なんだ、そうやってリフレッシュすることが最高の時間の使い方だよね」、なーんてかっこよく言ってみたいんだけど、現実にはそんな時間は半日で飽きてしまって、逆に疲れてしまう、という...まあ、典型的な日本人ってワケです。きっと長期滞在型のバカンスなんて、できない口なんだろうな。

こういう気分で休日の夜を迎えたわけだけど、今日はそれを解消する気分でもない。ちょっと思いっきり都会的なカッコいい音楽を、じっくり聴きたい。ただただハッピーな音楽を聴く気分でもないかな。少しばかり内省的な気分になれる音楽...うん、そうだ、あのアルバムにしよう。デイヴィッド・サンボーン、1999年のアルバム、その名もズバリ、「インサイド」だ。

Inside / David Sanborn
Inside / David Sanborn


僕はかつてフュージョンと呼ばれる音楽があまり好きではなかった(その全てではないですが、特に日本のものは...)。学生時代はフュージョンの全盛期で、周りでもバンドを組んで、ひたすら音楽に没頭している友人もいたが、どうもそのスポーツ感覚というか何と言うか...汗をかきかき、テクニック自慢の早弾きを延々繰り広げていくようなコンサートに駆り出されているうちに、心無い音楽は聴きたくない、なんて気分になって、そちらを向かなくなってしまった。今考えれば、なんと偏狭なことだろう、と思ってしまうんだけど、そういう時期がしばらく続いた。

そんな背景もあって、デイヴィッド・サンボーンはずっと苦手だった。時々耳に入る音楽は、ちょっとファンキーで典型的なフュージョンサウンド。う~ん...パス!ってな感じだったかな。

まあ、そんなこんなも、時間がたつと状況は変わるっヤツで、フュージョンもだんだん廃れてきて、音楽の区分もあっち行ったり、こっち行ったり、融合したり。そして気がつけば僕自身も、より心の広い立派な(!)大人になっていて、「フュージョン?あー、いい音楽だったよね」、なんて事をしゃあしゃあと言える人間になってしまったワケです。

さてこのアルバムを購入した動機、それは少しばかり屈折していたかもしれない。その数年前、それまで全く見向きもしなかったデイヴィッド・サンボーンが、ちょっと毛色の違う、with Strings のアルバムを出し、聴いてみようかな、という気分になって入手。少しばかり僕のハードルも下がっていた。そんな中でこのアルバムがリリースされ、彼のファンと思しき人が、このアルバムについて、「期待はずれだった」と書いた文章をどこかで読んだ。そこには、これまでのファンキーな音楽ではなくて、より内省的でディープな音楽になってしまっている、それは彼の音楽ではない、とあった。

う~ん、これは聴いてみたい。そもそも彼のサックスサウンドは間違いなく超一級品だ。そんなサンボーンが一体どういう風に「期待はずれ」だったんだろう、と期待してしまった。で、即入手。一聴した感想は、「うーん、あまりにもカッコいい。これはすごい。」って感じだったかな。

このアルバムは、サンボーンの自宅に新設したスタジオで、天才ベーシスト、マーカス・ミラーをプロデュースに迎え、文字通り二人三脚で完成させたものだ。マーカス・ミラーは10曲中5曲、楽曲も提供し、ベースだけでなく、曲によってはギターやピアノ、エレピ、シンセ、ドラムス、シタール、クラリネット、プログラミング等々、八面六臂の活躍で、都会的で洗練され、ぐっと落ち着いたサウンドを展開している。ゲストも多彩で、その生み出される音楽に巧みにマッチしていて、サンボーンはその上を、幾分抑え気味に、とはいえ彼の持つ持ち味は存分に発揮した演奏を展開しているのだ。

アルバムは唐突にコンガとシェイカーのリズムパターンで始まり、その上にマーカス・ミラーのエレクトリック・ベースが滑り込む。そしてピリッと締まったエレピとドラムスが加わり、そこにサンボーンのアルト・サックスが乗ってくる。1曲目、マーカス・ミラーの曲、"Corners (for Herbie)"だ。

  Link:  David Sanborn - Corners (for Herbie)

マイケル・ブレッカーのテナーが、オクターブでメロディーを奏で、ウォレス・ルーニーのトランペットが入ってくれば、もう最強のホーンサウンド。あ~、何と贅沢でカッコいいサウンドなのだろう...言葉が出ない。

2曲目はアレサ・フランクリンの"Daydreaming"。リード・ボーカルに当時大ブレーク中のカサンドラ・ウイルソン、バッキング・ボーカルにエリック・べネイをフィーチャーしているが、これがまたいい感じだ。穏やかでやわらかい時間の中、途中で入ってくるドラムスの高速展開が、躍動感あふれる世界に導く。

  Link:  David Sanborn ft. Cassandra Wilson & Eric Benet - Daydreaming

5曲目にはサンボーンの名曲、"Lisa"が入っている。幾分抑え気味のサンボーンのサックスがこのアルバムにマッチしていい感じだ。それに続く"When I'm with you"では、レイラ・ハサウェイ、マーカス・ミラー、エリック・べネイがボーカルをとり、サンボーンのサックスと掛け合い、マーカスのスローなダンスナンバーを好演している。

  Link:  David Sanborn - Lisa (1999)
  Link:  David Sanborn - When I'm With You

9曲目の"Ain't No Sunshine"は、ビル・ウィザースの名曲。これを歌うのはスティングだ。ギターがビル・フリーゼル。う~ん、サンボーンのサックスもいいけど、スティングはやはり役者が違う。たった一曲で、一気にスティング特有の世界に引っ張り込んでいる。

  Link:  Sting & David Sanborn - Ain't No Sunshine When She's Gone

最後はサンボーンの曲、"Miss You"。名手、ギル・ゴールドスタインがアレンジ、エレピで加わるのだが、ここでは、サンボーンの泣きのメロディーだけでなく、マーカス・ミラーもまた、フレットレスベースで歌うように掛け合う。それはあたかもこのアルバムを作ってきた二人の会話のようにも聞こえる。こうして、アルバム「インサイド」を締めくくる都会の孤独と哀愁を感じさせる音楽はフェイドアウトする。

  Link:  David Sanborn - Miss You


デイヴィッド・サンボーンは1945年生まれなので、このとき54歳。子供の頃小児麻痺にかかり、そのリハビリも兼ねて医者に勧められサックスを演奏し始めた。その後、ブルースやジャズに影響されて才能を開花させ、若くしてセッションミュージシャンとして活躍する。自分名義のアルバムを出し始めるのは30歳になってからだ。このアルバムは、ソロ活動を始めて四半世紀、ジャケットのごとく自らの内側に燃え続ける炎をじっと見つめながら、その情熱を静かに発揮させた名盤である。今回彼の年齢を知ると同時に、これが彼の20世紀最後のアルバムだったことを知り、恐らくその変質は文字通り、これまでの自分のたどってきた音楽も含め、インサイド・内面を見つめ続けた答えだったのではないかと思う。

僕は当時、このアルバムのサウンドに強烈にインスパイアされた。そのパーカッションサウンドやサックス、ブラス、エレピ、ベースなどの演奏に満ち溢れるアイデアが仕事でもとても役に立ち、僕としても思い出深い一枚となった。

ぐっと内面に食い込むような都会的で内省的な音楽。久々に聴けてよかった。元気が出た。この掌に常に燃え続けるもの。それさえ持ち続ければ、下降気味の気分なんてすぐに挽回できそう...かな?



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